SHINGAKUKAI 70th
Interview

子どもたちみんなが、夢中になれるものと出会ってほしい。私たちはいつも、そう願っています。信学会ではこのサイトを通じて、夢中で何かを続けてきた人たちから、見つけ方や向き合い方などをうかがい、お伝えしていきます。

vol.2

長野放送アナウンサー 重盛赳男さん


計画どおりにいかないから
おもしろい

長野放送の夕方のニュース番組「NBSみんなの信州」でキャスターを務める重盛赳男さん。忙しい仕事のかたわら、TOEICで高得点をキープしたり、フルマラソンを2時間台で走ったりと、公私ともに努力を積み上げています。仕事に対する思いや、没頭し続けるコツなどを聞きました。(以下、敬称略)

モチベーションを上げるために夢を決めた

― アナウンサーになりたいと思ったきっかけを教えてください。

重盛:高校生のときにたまたま放送委員会に所属していたんです。入ったのは何となくだったんですけど、校内アナウンスで声を褒められたことがアナウンサーを目指すきっかけになりました。アドリブで笑いをとったりしているうちに、自分の声で生徒から先生まで何百人という人がリアクションをくれるっておもしろいと思って、これを仕事にできたらやりがいがあるだろうなと思ったんです。

― その後、早稲田大学に進まれます。アナウンサーになる人が多いと聞きますが、それが志望動機ですか?

重盛:そうなんです。高校に入学してから勉強に身が入らない時期があったんですけど、その時期に「将来の夢を決めてしまえばモチベーションを上げられるだろう」と思って、なりたい職業を固定しました。そのためにはどこの大学に行ったらいいかを調べたんです。

― 進学してからもアナウンサーになるための努力は続きましたか?

重盛:人並みにはしたと思います。アナウンスを研究するサークルに入ったり、2年生からは試験のためのスクールに通ったり。

― ずいぶん早くから努力している気がするんですけど、アナウンサー志望だと人並みなんですか?

重盛:そうですね。「絶対にアナウンサーになるんだ!」と思っている人は、1年生のうちから対策を始めますから。

― 相当な高倍率の中で合格するために、どんなことに気をつけましたか?

重盛:原稿読みだとか、パネルトークだとか、そういった(技術的な)ことだけで受かるわけではないと思うんです。試験が始まる前も終わった後も“人となり”を見られている、ということは聞いていたので、常にいい印象を与えようと心がけていました。その一方で、いつもの自分を見せようとも思っていました。

― ということは、普段どおりの自分も、いい印象を与えられるという自信があったということですか?

重盛:そうなりますよね(笑)。ただ、昔から徳を積もうと思っている少年ではありました。他人が見ていないところであっても、いい人であろうと。

小学生時代の重盛さん(左)

たくさんの経験をさせてもらえた

― 「少年時代から徳を積んできた」というと、ご家族の影響が大きいんですかね?どんなご両親ですか?

重盛:父はまじめな人です。息子が言うのもなんですが、すごくちゃんとしている。母も同じくまじめな人ですが、どちらかと言うと社交的で、気遣いがすごい。どちらも尊敬しています。

― ご両親のいいところを受け継いだ印象ですね。

重盛:いや、社交性は兄のほうが受け継いだ気がします。2歳上なんですけど、中学の部活も一緒だし、進学した高校も一緒だったので、昔から比較されることが多かったんです。負けたくなくて努力してきたという自負はあります。ただ、社交的でたくさんの人から好かれるのは兄でしたね。私はどちらかというと人見知りのほうで、そこは努力してもかなわなかった気がします。

― 人見知りには見えないですけど(笑)。でも、ご両親とお兄さんのいいところを見て育ったということはわかりました。

重盛:小さいころから、たくさん映画を観せてくれたり、本を読むように言われたり、父の仕事の関係で小学校1年から6年までアメリカに住んだのも含めて、たくさんの経験をさせてもらえました。それも自分の人格形成につながっていて、目の前のことを何でもおもしろがれる人間に育ったと思います。

住んでいるところを好きになってもらいたい

― アナウンサーのお仕事のおもしろいところを教えてください。

重盛:よく取材に出かけるんですが、事前に準備しても計画どおり、予想どおりにいかないことが多いんです。ただ、予想外のことのほうがニュースとしてもおもしろいし、対応するのも醍醐味です。

― 逆に大変なところはどんなところですか?

重盛:常に体調を整えておく必要もありますし、いろんな人と接するからこそ感じるストレスもあるかもしれません。

― それでもやりがいを感じている?

重盛:そうですね。先ほど言ったように、予想していたコメントや期待していた映像が撮れないようなことがほとんどですけど、何よりいい番組を作ろうという気持ちがあるから、めげずに頑張れるんだと思います。

― 重盛さんにとって「いい番組」とはどんな番組ですか?

重盛:住んでいるところを好きになってもらえるような番組ですね。たとえば、辰野町の商店街の取材を続けてきたんですけど、シャッター街に新しいお店を誘致したり、イベントを開いたり、新しい時代の商店街を模索しながら頑張っているんです。そうした人たちの動きを伝えることで、どうしたら地元が盛り上がるかを考えるきっかけやヒントになったらいいなと思っています。

Profile

重盛赳男(たけお)さん
長野放送アナウンサー

1991年生まれ、長野県伊那市出身。早稲田大学国際教養学部卒。鹿児島の放送局にアナウンサーとして4年間勤務したのち、地元・長野県の長野放送に入社。2019年から夕方のニュース「NBSみんなの信州」でキャスターを務める。マラソンの自己ベストは2時間52分52秒。TOEICは970点。